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The Truth -日本人メジャーリーガーを辿る-:黒田博樹

〇三振/四球比が物語る支配的な投球内容

黒田の投球内容に関してもう少し踏み込んでみよう。2008年にメジャーデビューを果たして以降、黒田のスタッツに目をやると、主だった成績は平凡である。例えば勝数だ。2011年までの4シーズンで黒田が勝ち越したシーズンは2009年の1度のみだ。加えてその年はラスティ・ライアル‐そう、巨人にいた、あのライアルだ‐のライナーを頭部に受け負傷した影響で117.1イニングしか消化出来なかった。すなわち規定投球回を投げ抜いたシーズンに関しては、彼は全てのシーズンで負け越しを記録したのである。

 

表 1 黒田博樹 規定投球回到達年の勝敗

年度
2008 9 10
2010 11 13
2011 13 16

(FanGraphs参照)

 

しかし勝敗がその選手を如実に表している例は驚く程稀だ。それは直感的にも、我々が投手評価を下す際勝敗よりも防御率で選手を吟味する傾向にあることからも把握出来るだろう。勝敗は投球内容と打線の援護の兼ね合いにより生み出される産物だ。投手の力量を判断する材料としては、余りにも雑音が多いと言わざるを得ない。

幸いなことに我々が下す投手評価の幅はセイバーメトリクスという新たな概念の発達により広がりを見せた。投手の真価を伺い知るための材料は今やウェブに多種多様転がっている。FanGraphsを訪れれば、その選手の詳細なデータにとどまらず、マイナー時代の成績までも確認することが出来る。

そんな素晴らしい時代になったことに感謝しつつ、以下にいくつかそうしたスタッツを揃えてみた。

 

表 2 黒田博樹 主なスタッツ

年度

K/9 BB/9 K/BB FIP GB% IP
2008 5.69 2.06 2.76 3.59 51.3 183.1
2009 6.67 1.84 3.63 3.58 51.1 117.1
2010 7.29 2.20 3.31 3.26 43.2 196.1
2011 7.17 2.18 3.29 3.78 47.7 202

(FanGraphs参照)

 

各スタッツの紹介を踏まえつつ、黒田という選手の実像に迫ろう。

・K/9

9イニング換算でどれだけの奪三振を獲得出来たかを示す。日本では奪三振率という名称がポピュラーだろう。黒田はデビュー以降2010年まで年々このスタッツの水準を上昇させた。メジャーリーガーとして成熟を迎えキャリアイヤーを飾った2011年はこのスタッツ値を僅かに減少させたものの、2010年に到達したレベルは維持している。ここからは、打者の対応を踏まえ自らをタフな環境に適応させた黒田の姿が伺える。メジャー移籍当初から彼がメジャー独特の練習方法に好意的であったことは有名であり、対照的な反応を示した松坂大輔(レッドソックス)とは頻繁に比較されている。そんな彼の姿を見る限り、これは当然な結果ではないだろうか。

・BB/9

9イニング換算で許した四球数を表し、黒田はこの部分でデビュー当初から素晴らしい内容を披露している。現在に至るまでコマンドに苦しみ続けている松坂はこのスタッツ2007年の3.52がキャリア最高の値であるのに対し、黒田は2.50すら上回ったことが無い。2010年に記録した2.20がキャリア最低である。これは驚くべき結果であり、黒田が備える素質の高さを如実に証明している。

・K/BB

奪三振と四球の比は、上記2つのスタッツを総合的に判断し、投手としての完成度、試合をいかに支配出来たかを示すことが出来る有用なスタッツだ。奪三振が多く四球が少ない選手とは即ち、無駄な走者を許すことなく、確実な方法でアウトを稼げることを意味する。奪三振はインプレーとなる可能性自体を消滅出来る点で有力だ。

黒田はコマンドの良さからK/BBを高い水準で維持することが出来る。2008年のK/9は5.69に過ぎなかったが、K/BBでは2.76と及第点の内容を残している。K/9の上昇に伴いこのスタッツの値も向上しており、メジャー各球団は特に黒田のこの部分を高く評価している。

・FIP

投手の力量により左右されるスタッツを奪三振と四球に死球、そして被本塁打のみに限定し、これらの値を扱い擬似的な防御率を形成したものがFIPである。名著『マネーボール』ではボロス・マクラッケンが新しい投手評価を編み出したシーンが描かれているが、このスタッツの背景はこれに同じだ。文中にはDIPSとの表記が成されていると思うが、基本的な性質はFIPと大差無いと考えて頂いても構わない。

投手の実力のみを抽出して作り出した擬似防御率であるFIPは、特に防御率との比較で意味を発揮する。下に、黒田がここ4年のシーズンで記録した防御率とFIPの比較を表した表を載せよう。

 

図 1 黒田博樹 FIPとERAの関係(FanGraphs参照) 

黒田は2008~2010年までごく僅かではあるが防御率がFIPを上回っていた。これは実力(=FIP)と比較して内容(=防御率)が芳しく無いことを示し、一般的に不運であるとされる現象だ。

その傾向が一変したのが2011年であった。この年はFIPが例年に無い幅で防御率を上回り、内容では自己最高の成績を披露した一方、FIPは自己最低の値を記録。実力が伴わない形で自らのキャリアイヤーを迎えた、との何とも言えない分析結果を導くことが出来る。

こうした不運から幸運、またはその逆へと値が振れる現象は「揺り戻し」と称される。セイバーメトリクスは、全ての選手はインプレーという領域に差し掛かった際は運の影響を受ける他に術が無いとの論理を打ち立てている。幸運はいつまでも続かないし、不運もまた然りだ。必ずバランスが取れるように、世界は構成されている。

少々神秘めいた話になってしまった。しかし値が振れているとは言え黒田のFIPは素晴らしい内容だ。このスタッツで3点台を維持するためには相応の実力が必要であるとされる。ごく限られたスタッツのみによる側面的な見方であることは否めないが、少なくとも黒田が優れた先発投手であることを証明するひとつの材料が存在することは確かだ。

 

・GB%

全てのインプレーにおけるゴロの割合を示す。ゴロの特徴は、そのインプレー打球が長打になる可能性が低い部分にある。ゴロにより併殺を生み出すことも、その割合が上昇すればより容易となる。一概にゴロが多い選手が素晴らしい結果を披露している訳では無いが、ゴロを打たせることで得られる利点が多いのも事実だ。

GB%の平均はおおよそ44%程度に収まるとされるが、黒田はその基準で言えばゴロ型と言えるスタイルの色が強い。ここ数年はやや下降気味であるが、それでもリーグ水準は上回っている。これは、彼の投球において重要な役割を果たすツーシームが効果をあげている結果だと考えられる。ただしこの部分に関しては特筆すべき出来では無く、彼の投球を語る上で重要なスタッツでも無い。

 

・IP

イニング数は黒田を評価する上で欠かせない要素だ。彼は2009年に唯一故障を経験したが、これはライナーを頭部に受けるアクシデントによるものだ。基本的に彼は頑健な投手であり、自ら故障の罠に陥るような真似はしない。日本時代からタフさを売りにしてきた彼は、メジャーでもその座を守り続けている。チームは彼が多くのイニングを消化することを望んでおり、彼自身それが可能なだけの実力とスタミナを備えている。

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One Response to The Truth -日本人メジャーリーガーを辿る-:黒田博樹

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