なぜ彼らは負けるのか―MLBの戦力格差拡大を考察する―

New York Yankees at Baltimore Orioles April 24,  2011

 

 

 

 

 

 

Part2

「Anything can happen in the playoffs.」

 これは野球の世界でも有名な言葉の1つで、プレーオフではどんな事でも起こりうるという意味だ。この言葉通り、シーズンの結果とプレーオフの結果は一致しないと長年思われてきた。だからチームを編成するうえで長年最優先されたのは、プレーオフに進出するチームを作る事だった。だけど、もうこの常識は通用しないのかもしれない。その証拠に2016年と2017年のワールドチャンピオンはカブスとアストロズだった。

 日本にはMLB専門の有名な雑誌Sluggerがある。その2013年10月号を私は今も大切に持っている。ある記事に物凄い衝撃を受けたからだ。10月号のメインテーマは「強豪チームの作り方」だ。その中にカブスとアストロズを特集した記事がある。当時の両チームは再建真っ只中で、5年後に強くなるなんて言われてもピンと来なかった。だけど5年経った今見返してみるとどうだろう、彼らは2チームとも見事に再建を終えてワールドチャンピオンになった。この2チームを見て思うのは、もうMLBの数チームはワールドチャンピオンになるための方程式を解いたのではないかということだ。

 カブスとアストロズに共通している事は、両者とも恐ろしいほどのチーム解体を強行して再建を進めた事だ。一方でチームを完全解体するのではなく、既存の選手に補強を施してプレーオフ進出を狙う戦略をとったチームもあった。その最たる例は2014年から2015年のパドレスとホワイトソックスだろう。

 まずパドレスだ。パドレスの2014年の成績は77勝85敗だった。確かにチーム防御率はリーグ2位だったけれど、得点は両リーグ最低だった。そのオフに彼らはストーブリーグの勝者になった。クレイグ・キンブレル、マット・ケンプ、ウィル・マイヤーズらを獲得して2015年のPO進出を狙ったのだ。だけどその結果は残酷だった。なんと勝ち星を3つ減らして、現在も再建が終わっていない。

 次はホワイトソックスだ。ホワイトソックスの2014年の成績は73勝89敗だった。得点は両リーグ13位で、防御率は27位だった。はっきり言って投打共に中途半端な状態であった。だが、彼らもパドレス程ではないけれど14年オフに補強を施した。メルキー・カブレラやアダム・ラローシュ、デビッド・ロバートソンを獲得したのだ。彼らはみんな素晴らしい選手だけれど、フランチャイズを変えるほどの選手ではない。その結果勝ち星の数こそ3つ増えたが、プレーオフには進出できなかった。その後彼らがクリス・セールやホゼ・キンタナを放出して本格再建に踏み込んだのは記憶に新しい。

 カブスとアストロズの成功、そしてパドレスとホワイトソックスの失敗を見れば勝率5割を少し下回っているようなチームが取るべき戦略は明らかだ。それは”中途半端にFAやトレードで選手を獲得するのではなく、一度チームを解体する”というものだ。実際に現在のMLBのチームは、チームの実力が不十分な状態では中途半端な補強をしなくなっている。昨年のシーズンオフにFA市場が停滞して多くの選手の契約が決まらなかった。その原因の1つに、戦力が不十分なチームがFA選手の獲得に消極的だったことがあるのは間違いない。

 マイク・ムースタカス(現KC)が高額の複数年契約を結べなかったのはその象徴だ。彼はパワーはあるが出塁率が低いタイプで、守備も良くない(2017年の守備防御点は-8)。はっきり言って、彼の加入でフランチャイズを変えられるほどの選手ではない。彼は$17.4Mのクオリファイングオファーを断ってFA市場に打って出たのに、高額契約を得られずロイヤルズに$5.50Mの契約で戻った。

 ここまで見てきたように、MLBではFAで戦力を整えてプレーオフを目指すより計画的に再建を進めることを選ぶチームが増えている。2015年以降のブレーブスもそんなチームの1つだ。彼らもアンドレルトン・シモンズやクレイグ・キンブレルら主力を放出して再建を行なってきた。今季はその再建期に獲得したショーン・ニューカムが好調で若いオジー・アルビースやロナルド・アクーニャもMLBに昇格してきて好調だ。ブレーブスがアストロズやカブスに続けば、さらにこのチームを完全解体して再建に励む流れは加速するだろう。

1 2 3

コメントを残す