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アルシデス・エスコバーのヤクルト・スワローズ移籍とそこから考えられる影響

Alcides Escobar

 

 

 

 

 

 

 

エスコバーの実際のプレー(2018年)

  エスコバーの最大の強みは負担の大きいショートというポジションで試合に出場し続けることある。2010年〜2018年の間での出場試合数は1390試合であり、この間毎年100試合以上に出場した選手はエスコバー含め11人しかおらず、内野手ではエスコバー以外にはスターリン・カストロとイアン・キンズラーしかおらず、キャッチャーではヤディアー・モリーナと内外野を守るユーティリティのベン・ゾブリストと他は外野手しかいない。またエスコバーは毎年140試合以上に出場しており、アンドリュー・マカッチェンの146試合に次いで2番目に多い試合数である。この数字は故障をしない身体の丈夫さに加え毎年打撃面でも守備面でも一定水準のプレーをしてきたことで残すことができたと考えられる。ヤクルトは故障者が毎年多く、実力のある選手が揃いながら主力の故障離脱によって打線の得点力が安定せず下位に沈むシーズンが多い。そのため故障を滅多にせず安定したパフォーマンスを見せるエスコバーは非常に魅力的な選手であったと考えられる。

表2:2010年から2018年の間に全てのシーズンで100試合以上に出場した選手の出場試合数。赤字が最小である。エスコバーはこの間の合計出場数と平均出場数でもマカッチェンに次いで2番目に多い。

  エスコバーが140試合に出場した2018年シーズンに100試合以上に出場した選手でクリスチャン・ビヤヌエバは、2019年シーズンは開幕から読売ジャイアンツでプレーし、ヤンガービス・ソラーテは7月から阪神タイガースでプレーした。また来季からエスコバー以外にホセ・ピレラが広島カープで、ジャスティン・ボーアが阪神タイガースでプレーし、2019年シーズンに100試合以上に出場したヘラルド・パーラが読売ジャイアンツでプレーする。さらに2019年シーズン途中に千葉ロッテに入団したレオニス・マーティンもインディアンスからリリースされるまでのペースで出場していれば100試合以上に出場していた選手である。このようにメジャーリーグで主力として活躍していた選手が翌年などに来日するケースが急増している。 これには近年のFA市場の冷え込みとともに、フライボール革命で多くの選手が打撃を向上させ、ショートやセカンドでもフランシスコ・リンドーアやグレイバー・トーレスのようにマイナー時代には最高でホームラン数がシーズン10本程度であった選手がメジャーでは30本以上放ち、またマーカス・セミエンやホルヘ・ポランコなどメジャー定着後伸び悩んでいた選手が中軸に成長するなどショートやセカンドといったポジションの選手の打力が特に向上しており、エスコバーのように打撃を向上できなかった選手はメジャーリーグでプレーし続けるのが難しくなっていることが原因と考えられる。最近では今年ゴールドグラブ賞を獲得し、ホワイトソックスのセカンドのレギュラーであったヨルマー・サンチェスがウェーバーにかけられるなど、エスコバーのように打力の高くない守備型の内野手がメジャーリーグでプレーし続けることが難しくなっている傾向が強まっている。

 プロ野球において近年二遊間でレギュラーとして活躍した外国人選手はルイス・クルーズ(元ロッテなど)やアンダーソン・エルナンデス(元中日)といったメジャーリーグではシーズン通してレギュラーとしてプレーしたことのない選手や、ユリエスキ・グリエル(現HOU)やネフタリ・ソト(現DeNA)のように他のポジションから日本でコンバートされた選手である。また結果は残せなかったが、ホルヘ・マルティネス(元巨人)など育成契約で入団した選手や、アンソニー・セラテリ(元西武)などメジャー経験のない選手や、オスカー・サラザー(元DeNA)などテスト入団の選手で二遊間の選手を獲得してきた例はある。

 近年はアンドリュー・ジョーンズ(元楽天)を筆頭にダヤン・ビシエド(現中日)やナイジャー・モーガン(元DeNA)など、メジャーリーグで実績のある選手の来日しチームの中軸を担っているが、モーガンはセンターでプレーしていたもののその多くはファーストやレフトやDHといったポジションの選手である。これには本塁打王に輝いた年にノンテンダーFAとなり2月まで契約ができなかったクリス・カーターや、2018年に25本塁打を放ちながら2019年はどこのチームとも契約することができなかったエバン・ギャティスらに代表されるように、近年メジャーリーグではこのようなポジションの選手がMLBのチームと良い契約を結ぶことが難しくなっているためと考えられる。

 そして今後はエスコバーを皮切りに、以前ならメジャーリーグでプレーすることができるレベルにあった守備型の二遊間の選手が、日本のプロ野球への移籍を考える選手が増える可能性がある。これによって打撃等に課題がありながらも守備や走塁が評価されレギュラーとして出場できていた日本人の二遊間の選手が、外国人選手にポジションを奪われるケースや、二遊間が補強ポイントであるチームは今までならばドラフトで主に大学生や社会人の選手を即戦力として獲得するケースが多かったが、そのような選手を獲得せずに外国人選手で二遊間を補強するようになる可能性が考えられる。これらの日本人の二遊間の選手の中で特に小柄で非力ながら俊足と守備力を持ち味とする選手は速球に弱い傾向があり、近年の球速向上に対応できなくなることが考えられ、今後さらに成績を落とす選手が増える可能性がある。これらの要因から二遊間の外国人選手を獲得しようとする流れが加速し、今後エスコバーのような選手が増える可能性はさらに高まると考えられる。

 

 このようにアルシデス・エスコバーの移籍は一人の元メジャーリーガーが日本のプロ野球に移籍したというだけでなく、現在ないし今後FAとなったエスコバーと近い立場にある選手や、日本のプロ野球チームの補強方針、さらには現在プロ野球のチームに所属してる選手や今後ドラフト候補になる選手にも何かしらの影響を与える可能性が考えられる。

 

Written by Akiyuki Suzuki

Photo link https://flic.kr/p/24fzTHS

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