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Category Archives: Back To The Future

Back To The Future:ソクミン・ユン

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  • ヒョンジン・リュと並ぶ上質なアーム

今オフメジャーリーグは”TANAKA”フィーバーに沸きに沸いたが、その裏で1人の韓国人投手がMLBへと活躍の舞台を移した。

彼の名はソクミン・ユン。ボルティモア・オリオールズと3年5.575M、インセンティブ込みで最大$13.075Mの契約に合意。マイナー行きの拒否条項も含まれており、チームの先発5番目の枠を争うことになると目されている。KBO起亜タイガースにて9年間プレーし通算73勝59敗44S、3.19ERA。先発とリリーフ両方をこなす器用さを見せる一方で、ムラの激しいシーズンを送ってきたこともまた事実である。11年には投手3冠、リーグMVPを獲得する一方で、07年には打線の援護に恵まれず最多敗戦も記録。2013年の投球内容もERA4.00と自身8年ぶりの防御率4点台を記録し、あまり芳しいものとは言えなかった。

2008年北京五輪、2回のWBCで示したパフォーマンス(特に09WBCの準決勝、ベネズエラ戦では6.1IP/2Rの好投)がメジャーリーグからの注目を集めるきっかけとなり、93マイルのファストボール、そして上質なスライダーとチェンジアップを併せ持つ素材だ。マウンド上で示す闘争心もメジャーリーグで活躍するヒョンジン・リュ(ドジャース)と並ぶレベルと高い評価を受けている。メカニクスもスムースでコマンドが安定しており、打者の左右を問わず内角をつける投球も評価が高い。

 

  • ユンに対する不安要素

ただ韓国ではユンに対する不安を示すメディアも存在する。

最大の懸念は先発として起用されるのかどうか。ユン自身もメジャー入りにあたり先発としてプレー出来るかを重視しており、契約のオプションには先発登板数が盛り込まれているとのことだ。オプションは通常達成することが容易ではない成績を基準に設定されることから、オリオールズは先発としての登板回数にオプションを設定したと見ることが出来る。これは先発ローテーション入りするかはまだはっきりしないということの裏返しとも言える。またオプション契約の規模も大きく、ユンはオプションをすべて満たすと3年間で最大7.5Mのインセンティブを獲得する。年俸よりもオプションの割合がより高いことから、ここにはユンが先発でうまくやれば大当たりで、リリーバーとして活躍しても大きな損ではないという意味が込められている、とも見ることが出来る。

もう1つの不安要素は精神面だ。韓国の評論家の中には「昨年の不振は自信を失ったことから来るところがあり、ストレートも全盛期ほどのキレは無かった。メジャーでは変化球でかわす投球をしてもいずれは攻略される。以前の球威に戻らない限りメジャーの強打者相手に活躍は厳しいのでは?」と心配する声もある。

彼らの言う通り、もし田中将大(ヤンキース)に大きく劣るところがあれば精神面かもしれない。全く同じ舞台で活躍した2人を単純に比較するのは気が引けるが、田中が年々エースとして歴史の浅い球団の顔として成長を遂げ心身ともに日本のエースになっていったのに対し、ユンはエース、中継ぎ、抑えをこなしながら、ある意味で波乱万丈のキャリアを辿ってきた。その中で彼に自信が身に付いたのか…?そこには少々疑問が残る。

 

  • 「お買い得物件」の可能性

このように田中とユンは、2011年オフのダルビッシュ有(レンジャーズ)と岩隈久志(マリナーズ)と同じ形で比較される存在だろう。かたやNPBで無敗伝説を作りメジャーリーグ史上5番目の高額契約を勝ち取った一方で、先発とリリーフで平凡なスタッツに終始した男。メジャー入り前年に残した成績により市場での評価は大きく差がつく結果となった。

もちろん田中は今オフのFA市場で最高の先発とランクしても遜色ない右腕であるが、逆に言えばポテンシャル、投げるボールの質に大差のないユンがオリオールズにとって田中の約12分の1の「お買い得物件」となる可能性も、決して低くはないのだ。田中にはない紆余曲折を経た中で得た柔軟なオプションをユンは持っている。

今年はNPB最高のアームと並んで、このKBO2人目のMLB選手の活躍も見守っていきたい。

 

Text by Kenji KIMOTO
写真:http://www.flickr.com/photos/36307913@N00/7108851895/in/photolist-bQbHZZ-ip6UhY-aKtZsr-bM8g2M-dan4no-avRiAQ-aK4bxR-867smL-867sgQ-867sj7-7MerR5-7AABdT-aTE6dB-867qWU-867sD7-82pkKa-7K86Ze-8hqXab-j4BD76-j4DN2Q-j4DYsE-j4Aqbv-avZQG6-j4zPLt-9miSQe-gorHWN-drCtej-9NsoXz-ankkV6-cRu3Vb-cRu4cQ-cRu3hE-cRu47S-cRu42f-cRu3N5-cRu38U-cRu2TA-cRu3CY-cRu32L-cRu3xE-7Etvej-hJgXVk-hJgJTb-hJgY6w-hJgFaE-hJgVS2-hJgd8o-hJfTsX-hJh5pT-hJhjgk-hJhb7e

Back To The Future:2013 Rule 5 Draft

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  • ルール5ドラフトとは?

ルール5ドラフトは「マイナーで選手を飼い殺すケースを防ぎ、多くの選手にチャンスを与える」機会として形作られた仕組みだ。名称の由来はメジャーリーグ規約の5条に規定されているためであり、同じ理由よりアマチュアドラフトは「ルール4ドラフト」と呼ばれている。

 

  • 仕組み

ルール5ドラフトはウィンター・ミーティングの締め括りとして開催され、具体的には以下条件1&2もしくは3を満たした選手を対象としてドラフトを行うモノだ。ドラフトはメジャー・3A・2Aと3つのフェーズに分かれている。

 

  1. 40人ロースター枠外
  2. 1のうち契約時の年齢が18以下であり、かつ入団から5年以上が経過した選手
  3. 1のうち契約時の年齢が19以上であり、かつ入団から4年以上が経過した選手

 

この規定は2006年より対象入りの期間が1年延び、この影響で以前よりも有望なプロスペクトを指名することが出来なくなったと評されている。MLB.comのジョナサン・メイヨーはこうコメントしている。「ここ数年はジョシュ・ハミルトン(エンゼルス)は愚か、ホアキム・ソリア(レンジャーズ)クラスの素材も数人に止まっている。チームの見極めが向上している結果もあるかもしれないが、良くても控えレベルに止まっている」

指名チームは$50Kを旧所属チームに支払い、自チームの25人ロースター枠に入れることが出来る。ただしロースター内にはシーズンを通じてキープする必要が生じ、DL入りの期間を除いて90日以上の登録日数に満たない場合は翌年も25人ロースター内にキープしなければならない。

25人ロースターから外す場合、旧チームに選手を返却し、代わりに$25Kを受け取る。旧チームが返却を拒否したケースでは、選手はウェーバー公示をされ、ウェーバー上でのルールは通常通りだ。ただし、ウェーバーでクレームしたチームも25人ロースターに当該選手をキープする必要がある。

これらのルールはチャンスを与える制度本来の目的の一方で、ルール5ドラフトを利用したプロスペクトの過剰な引き抜きを抑制する意味合いも含まれている。

Back To The Future:Smackdown! -田中将大 × ソクミン・ユン-

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プロスペクト評価を得る上で異なる素材同士の比較は、彼らが示す価値を浮き彫りにする素晴らしいアプローチだ。そして、比較の後に得られる答えは1つでは無い。項目を辿りつつ、各人がそれぞれの結論を導かんことを。

 

  • Match Up:田中将大 × ソクミン・ユン
プロフィール
名前 田中将大 ソクミン・ユン
チーム 東北楽天ゴールデンイーグルス(NPB) 起亜タイガース(KBO)
FEDリスト - -
生年月日 1988/11/1 1986/7/24
投/打 右/右 右/右
身長/体重 6-2/205 6-0/180
ポジション RHP RHP

 

  • ポテンシャル

2人が辿ったシーズンは対照的なモノであった。田中が27回全ての先発でクオリティ・スタートを示し、その間24勝0敗&1.27ERAたる「モンスター・イヤー」を示したのに対し、ユンは自身とチームの不甲斐無いパフォーマンスから先発とリリーフ両方を経験した。田中はキャリアタイの防御率を示し、チームを創立9年で日本一に押し上げたが、ユンは2005年以来となる4点台の防御率(4.00)に終わった。

パフォーマンスで明暗が分かれた一方で、本質的な部分で2人の実力に大きな差は存在しない。いずれも90マイル半ばを計時出来るパワーがあり、いかなる打者に対しても攻める姿勢を忘れない闘争心がある。スカウトは、特にユンをアジア人らしからぬアグレッシブさの持ち主として高く評価しており、その点ではヒョンジン・リュ(ドジャース)にも劣らない実力を示すと、2009年のWBC時に語っている。

田中は高校時から楽天入り最初の時期にかけて縦方向に変化するハードなスライダーを主なアウトピッチとして扱っていたが、2010年にK/9が6.9までに落ち込んだことを重大に受け止めた後はスプリッター投手へとモデルチェンジを果たした。88マイルで鋭く沈むスプリッターはスカウトから高い評価を得ており、「世界トップクラス」たる形容詞が与えられている。スプリッターがレパートリーに加わったことで、田中のピッチングはたちまち幅が広がった。上質なスライダーがセカンドピッチとなり、日本の打者はストレートとスプリッターいずれかを絞りきれずに空振りをするパターンで田中を打ち崩すことが出来なかった。彼のストレートは軌道がまっすぐになりがちだが、深いイニングでも95マイルを計時し、スプリッターも絶妙なボールゾーンに集めることが出来る。

ユンは田中のスプリッターに並ぶアウトピッチに欠ける一方で、上質なスライダー&チェンジアップのコンビネーションで左右を問わず打者を抑えられる点が持ち味だ。コマンドも安定しており、メカニクスもスムース。田中よりも1回り小柄な体格に止まるが、放つボールでは決して大きく劣らない。彼の名がスカウトの間で広く知れ渡ったのは2009年のWBCであり、準決勝のベネズエラ戦でユンはミゲル・カブレラや未だ元気であったボビー・アブレイユを擁するパワフルな打線を6.2イニングで2失点に抑えた。このピッチングを見たあるスカウトはユンについてこう語っている。「リュやジュングン・ボン以上とは言えないが、同等の実力はある」特にスカウトはユンのアグレッシブなインコース攻めに惚れ込んでいる。

ここで強調されるべきことは、市場の評価程2人が持ち合わせているポテンシャルに差が無い点である。ユンは2013年の不振により正当に自らの実力を評価されない傾向にあるが、彼は2009年と2013年のWBCいずれもの大会で先発ローテーションを担った右のパワーアームだ。

 

  • コマンド&メカニクス

コマンドはここ数年で田中が目立つ向上を辿った部分だ。2009年の時点で、私は田中よりもユンを高く評価していた。それは田中のポテンシャルの高さを認める一方で、ユンがコマンド面で大きくリードを得ていたからだ。抜けるボールも相応に多いながらも、上質な3ピッチを安定したコマンドで操るユンの姿は印象的なモノであった。

しかし現時点で田中は大きく成長した。特に高校時、田中はフルエフォートかつ不安定なメカニクスでのピッチングゆえに不安定なコマンドでの内容を強いられ、2007年のBB/9は3.3に止まった。しかしキャリアを辿る毎にその値は改善され、2009年からは常に2.0以下の値をマークするようになった。ここ3年のK/BBは5.5を上回っており、2011-2012年に限れば8点台たる内容であった。田中が高く評価されるようになった要因にコマンドの向上が存在することは想像に難くない。

メカニクスに関しては、ユンがスムースさに定評を得る一方で、田中は時折炎症を起こす右肩の原因としてメカニクス面の問題を指摘されたケースがある。右腕主導の動作が肩に負担を与えているとの見解だ。しかし、キャリアの早い時期と比較しメカニクスは明らかに改善されており、動作自体は簡素化されてきている。

 

  • アップサイド

2人は純粋なプロスペクトでは無く、メジャーのチームから求められている役割は即戦力たるモノだ。コマンド面を含め2人は共によく磨かれており、投手としてのスタイルもしっかりと確立されている。田中は世界トップクラスのスプリッターを操り、ユンはスライダー&チェンジアップを織り交ぜたバランスの良さが光る。

能力的なネックが目立つのは田中の方であり、具体的にはフラットになりがちなストレートのことであるが、その点に関してはツーシームを取り入れる等の工夫を行っている。

 

  • 総括

2人のFA市場での立ち位置は、2011年オフのダルビッシュ有(レンジャーズ)と岩隈久志(マリナーズ)に似ている。実力面で2人は大差が無かったが、岩隈が故障の影響で規定イニングにも至らずに終わった結果、市場が与えた価格には大幅な差が付いている。そして現在のメジャーリーグを知っている私たちは、2人にそれ程の差は存在しなかったことを理解することが出来る。岩隈もダルビッシュも、リーグを代表する先発として実績を重ねているステージに立っている。

この分析は田中の実力・評価を貶めるモノでは無いが、市場でのリアクション以上にユンが優れたアームであることを伝えるモノではある。2013年の彼は本当に平凡な内容に終わったが、先発としてもリリーフとしてもシーズンを全うした経験の持ち主である彼は、田中には無い柔軟なオプションがある。実力だって兼ね備えている。

勿論、田中はプレミアクラスのアームだ。クレイトン・カーショー(ドジャース)だって、日本でプレーして同じような成績を残せるとは限らないし、その可能性はずっと低い。多くの関係者は「ダルビッシュと同等」と評価し、ポスティングの入札額もダルビッシュを上回るとさえ言われている。市場は田中フィーバーだ。『MLB Trade Rumors』は、FA市場最高の先発を田中と位置付けている。

しかし、ユンの方が「お得」な物件になる可能性は十分にある。彼の代理人がスコット・ボラスでも?代理人がボラスでも、だ。その意味で、彼は2011年で言う岩隈に成り得る可能性がある。

田中とユンは、アジアが生み出した右腕としては史上最高のデュオかもしれない。2人が市場に乗り込む?それは、2014年も特別なシーズンになるかもしれないとの期待を私たちに抱かせてくれるには十分な出来事だ。

 

Text by Koichi MIYAZAKI
写真:http://www.flickr.com/photos/39137990@N04/8539752354/in/photolist-e1CsRy-e1wMSV