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Category Archives: The Truth -日本人メジャーリーガーを辿る-

The Truth -日本人メジャーリーガーを辿る-:松井秀喜

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日本人メジャーリーガーの実像を追うシリーズ型のこのコラム。第6回では、球界を去りゆく長距離砲、松井秀喜にスポットを当てる。

 

 

  • 夢から醒める時

「ほら、今Godzillaの背番号は35だろ? だから普段の力の35/55しか出せないのさ。」

と誰かがジョークを言ってくれたら、ちょっと救われたのかもしれない。否、救われなかっただろう。プロスポーツ選手の価値の大半は、彼の者が残した数字によって決まる。それは”日本球界を代表するパワーヒッター”として海を渡り、ワールドシリーズのMVPに輝いた松井秀喜にとっても例外ではないだろう。

そして運動選手として、肉体の衰えが来るということも同じく例外ではない。一説に拠れば、人間の身体は28歳をピークにどんどん衰えていくものらしい。しかしそれでも日本の、いや、日本に限らず彼のファンは、前年12本塁打に終わった彼の復活という夢を見たはずだ。「Godzillaなら、アイツなら蘇ってくれる」と。

彼が今年、タンパベイ・レイズと契約を結んだのは4月30日だった。そして約1ヶ月後の5月29日、MLBに昇格したその日の第二打席に、彼はフィリップ・ハンバー(CHW)の直球をトロピカーナフィールドのライトスタンドにぶちこんだのだ。6月1日には、前年まで中日ドラゴンズに在籍していたチェン・ウェイン(BAL)からも本塁打を放つ。「帰ってきた! 俺達のGodzillaが帰ってきた!」そう思った人は少なくなかったと思う。

その夢から醒める時は、そう遠くなかった。球団から戦力外を受けたのは7月25日。わずか87日のチーム滞在における彼の成績を見れば、喩えどの球団であったとしても同じようにするだろう。8月1日は自由契約となり、その後他球団から声がかかることは一切なかった。

そして一昨日。12月29日。彼はニューヨークで引退会見を開いた。その詳細な内容はここに改めて記すまでもない。Yahoo!JAPANはトップニュースで、読売新聞は一面で、それぞれ彼の引退を報道していた。「一つの時代が終わったのだ。」ということを、否応なしに認識させられたのだ。当サイトの速報記事には彼の功績が綴られており、そしてこう評している。

 

“彼クラスの日本人スラッガーが今後現れるか怪しいほど松井秀喜という選手の存在は大きかった。”

“私のように彼がきっかけとなって野球に触れた人も多いことだろう。” Text by Hayato UWAI

 

まさにこの言葉の通りだと思う。彼は日本球界にとってセンセーショナルな長距離打者であり、ホームランという野球の醍醐味でスタンドを湧かせる天才だった。そして自らその存在を超え、今度は遠い遠いアメリカの球場に熱気の渦を巻き起こしていた。2009年のワールドシリーズの話はもはやするまでもない伝説である。しかしもはや、彼の姿をグラウンドで見ることはない。彼はバットを置いたのだ。残念なことに、惜別のマイクも、花束もないままに。

前口上が長くなりすぎた。今回はその彼の一年間を振り返って見ようと思う。

The Truth -日本人メジャーリーガーを辿る-:岩隈久志

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日本人メジャーリーガーの実像を追うシリーズ型のこのコラム。第6回はアップダウンの末にシアトル・マリナーズから2年$14Mの契約を得た岩隈久志のキャリアを辿る。

 

  • 躓いたスタート 

「安っぽいボールばかり投げる」。

2009年WBCでキューバや韓国を翻弄する活躍を披露していた岩隈久志に対し、あるメジャーリーグのスカウトはこう吐き捨てた。高いレベルで自らのイニングを完結させる側面は高い評価を得た。しかし90マイル前半のストレートとスプリッターを織り交ぜる内容は鮮烈なダルビッシュ有(レンジャーズ)のポテンシャルの前では惨めなモノであり、ローテーションの下位程度と見る向きも相応に存在した。

2011年オフに岩隈はFA権により1年$1.5Mでシアトル・マリナーズと契約を結んだ。結果的に彼は2つの障害を経て、先発として95イニングで防御率2.65のマリナーズ新人記録を打ち立てる活躍を持って上の評価を覆した。異国たる要素以上にタフであった環境と、上回った記録がエースのフェリックス・ヘルナンデスのモノであったこと。これらは岩隈の価値をより高めてくれている。

2つの障害。1つはヘスス・モンテロの存在である。ベネズエラ出身の23歳。捕手離れしたスケールを誇る打撃はエドガー・マルチネスと比較される程の素材であるが、その代償として捕手としてはキャッチングからスローイングまで、あらゆる側面で物足りない。スプリッターを主とする岩隈は、腰高な構えをする23歳に対し絶妙なコースへとボールを落とすことが出来なかった。盗塁阻止も粗削りなモーションゆえに苦労を強いられる。それは岩隈に限った話では無く、左右の揺さぶりが持ち味であるブレイク・ベバンを除いては誰しもがこれらの面で影響を受けた。結果的にモンテロが135試合のうち80試合でDHを任され、ミゲル・オリボが主にマスクを被る措置によりこのマイナス面は回避されることとなる。モンテロもOPSこそ.685と低調ながら15本塁打と相応なパンチ力は発揮。彼に関してはまだ23歳であり、一応は向上のプロセスを辿っている素材であることも忘れてはならないだろう。

しかし岩隈にとって最大の障害は監督であるエリック・ウェッジであった。

スプリング・トレーニングを経て彼が構築したローテーションの5人に、岩隈やその間鮮烈な活躍を披露したニカラグア出身のルーキーであるエラスモ・ラミレスの名は無かった。スプリング・トレーニング間で88マイル程度を計時するに止まった岩隈を、まさしくウェッジは「安っぽい」存在であると評価を下した。彼はキャリアで経験の無いリリーフとして開幕した上に、メジャーで初めての登板機会を得たのはシーズン15試合目となる4月20日のシカゴ・ホワイトソックス戦とマリナーズ側も彼の起用には明らかに消極的であった。ウェッジは彼やラミレスの代わりに、相応なコントロールとあらゆる側面で平均点しか叩き出せないヘクター・ノエシをマウンドに送り続けた。ノエシは6月29日時点で早くも10敗を喫した。にも関わらず、岩隈はブルペンで飼い殺され、ラミレスに至っては傘下マイナーへ降格された。

リリーフとして肩が出来上がるまでの時間は重要な要素であり、また短いイニングをパワーで捻じ伏せることが出来る側面も必要なポテンシャルである。しかし岩隈はそのいずれも持ち合わせてはおらず、リリーフとしてギアを上げて投げ込むボールも93マイル前後に止まった。モンテロの技術面も含め、リリーフとしての岩隈はもはや持ち味を失っていた。

リリーフとして30イニングを経験し23奪三振/13四球。本人は常に、この新しい経験を楽しんでいると語っていた。しかし値は正直である。明らかにリリーフとしての岩隈は惨めであった。速くも無いストレートと、何とも言い難いゾーンへのスプリッター。慣れないポジションであることは考慮すべきであるが、誰からも良さを感じられる雰囲気は無かった。

そんな彼に転機が訪れたのは7月に入った頃のことであった。

The Truth -日本人メジャーリーガーを辿る-:川崎宗則

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日本人メジャーリーガーの実像を追うシリーズ型のこのコラム。第5回は異国の舞台で独特な存在感を醸し出した川崎宗則にスポットライトを当てる。

 

 

  •  成績では語れない

川崎宗則を.192/.257/.202たる値で評価するのはあまりに無粋だ。

私は彼に対して新しい契約を提示しなかったシアトル・マリナーズを批判している訳では無い。ブレンダン・ライアンの後ろにはニック・フランクリンたる素晴らしい素材がマイナーで牙を研いでいる。フランクリンがマイナー全体でも傑出したショートのプロスペクトであることはよく知られていることだ。彼がダスティン・アクリーと2遊間を組んだ後は、ライアンをユーティリティたる枠に置けば良い。川崎に対しロースターの枠を使えばフランクリンの扱いがスムースでは無くなる上に、川崎自身も起用される機会に恵まれることは無いだろう。マリナーズの判断は至極当然であり、むしろ同じ日にオプションを破棄されたミゲル・オリボの影響の方がチームにとっては大きな意味がある。まず忘れてはならないのは、川崎宗則は61試合、115打席で20本の安打を放った程度の選手であった事実だ。長打は6月4日にアービン・サンタナ(エンゼルス)から放ったツーベースヒットが唯一である。守備を含め相応でしか無い内容に終始した結果として、Baseball-Reference.comが弾き出したWAR‐私はあまりこの指標を好んではいないが、あくまで目安である‐は-0.4であった。これは簡潔に言って、チームの勝利に全く貢献出来なかったことを示している。

川崎のシーズンに対しては惨めな評価をせざるを得ない。それは認めよう。スタートラインがマイナー契約であろうとも、川崎が野球選手として目立つ貢献が出来なかったことは明らかである。

しかし改めて主張をすれば、川崎をこうした側面で評価することは無粋だ。2年間のキャリアで満足な結果を示すことが出来なかった西岡剛に対し辛辣な評価が相次いだ一方で、成績は彼よりも情けない川崎が日米を問わずにファンの心に刺激を与えた根幹を私達は今1度考える必要がある。言うまでも無いだろう。彼は選手としてで無く、1年を通じ潔いまでのエンターテイナーであり続けた。フィールド内外を問わずに独特の行動によりカルト的な人気を得た。それは過去の日本人でも石井一久が入団会見の時に発した「アイ・ライク・ダブルチーズバーガー」とは比較にならない程のインパクトである。川崎のスタンスは一貫しており、まさに「奇人」と表現するに相応しいモノであった。

簡潔に言えば川崎が披露したシーズンは高く評価するべきである。それはデータによる評価軸が確立された現代において、新しいと言うべき側面における結論だ。選手としての価値と同時に、野球とはショービジネスだ。その意味で、彼はとんでもなく病み付きになるような、唯一無二の味を醸し出した。選手としてだけで無く、チアリーダーとしての顔。それらを兼ね備えた存在が、川崎宗則であった。