トレバー・バウアーが絡んだ三角トレード

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トレード・デッドラインを振り返って

             トレード期限が終わった。今年から8月中のトレードは禁止されており、ウェーバーを通過した選手をトレードすることは出来ない。  前回の記事 More »

トレードデッドラインが間近に迫る中、一足早く動き出したGM達。

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タイラー・スカッグスに捧ぐノーヒット・ノーラン

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2019年MLBオールスター

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Category Archives: The Truth – 日本人メジャーリーガーを辿る

The Truth -日本人メジャーリーガーを辿る-:川崎宗則

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日本人メジャーリーガーの実像を追うシリーズ型のこのコラム。第5回は異国の舞台で独特な存在感を醸し出した川崎宗則にスポットライトを当てる。

 

 

  •  成績では語れない

川崎宗則を.192/.257/.202たる値で評価するのはあまりに無粋だ。

私は彼に対して新しい契約を提示しなかったシアトル・マリナーズを批判している訳では無い。ブレンダン・ライアンの後ろにはニック・フランクリンたる素晴らしい素材がマイナーで牙を研いでいる。フランクリンがマイナー全体でも傑出したショートのプロスペクトであることはよく知られていることだ。彼がダスティン・アクリーと2遊間を組んだ後は、ライアンをユーティリティたる枠に置けば良い。川崎に対しロースターの枠を使えばフランクリンの扱いがスムースでは無くなる上に、川崎自身も起用される機会に恵まれることは無いだろう。マリナーズの判断は至極当然であり、むしろ同じ日にオプションを破棄されたミゲル・オリボの影響の方がチームにとっては大きな意味がある。まず忘れてはならないのは、川崎宗則は61試合、115打席で20本の安打を放った程度の選手であった事実だ。長打は6月4日にアービン・サンタナ(エンゼルス)から放ったツーベースヒットが唯一である。守備を含め相応でしか無い内容に終始した結果として、Baseball-Reference.comが弾き出したWAR‐私はあまりこの指標を好んではいないが、あくまで目安である‐は-0.4であった。これは簡潔に言って、チームの勝利に全く貢献出来なかったことを示している。

川崎のシーズンに対しては惨めな評価をせざるを得ない。それは認めよう。スタートラインがマイナー契約であろうとも、川崎が野球選手として目立つ貢献が出来なかったことは明らかである。

しかし改めて主張をすれば、川崎をこうした側面で評価することは無粋だ。2年間のキャリアで満足な結果を示すことが出来なかった西岡剛に対し辛辣な評価が相次いだ一方で、成績は彼よりも情けない川崎が日米を問わずにファンの心に刺激を与えた根幹を私達は今1度考える必要がある。言うまでも無いだろう。彼は選手としてで無く、1年を通じ潔いまでのエンターテイナーであり続けた。フィールド内外を問わずに独特の行動によりカルト的な人気を得た。それは過去の日本人でも石井一久が入団会見の時に発した「アイ・ライク・ダブルチーズバーガー」とは比較にならない程のインパクトである。川崎のスタンスは一貫しており、まさに「奇人」と表現するに相応しいモノであった。

簡潔に言えば川崎が披露したシーズンは高く評価するべきである。それはデータによる評価軸が確立された現代において、新しいと言うべき側面における結論だ。選手としての価値と同時に、野球とはショービジネスだ。その意味で、彼はとんでもなく病み付きになるような、唯一無二の味を醸し出した。選手としてだけで無く、チアリーダーとしての顔。それらを兼ね備えた存在が、川崎宗則であった。

The Truth-日本人メジャーリーガーを辿る-:高橋尚成

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日本人メジャーリーガーの実像を追うシリーズ型のこのコラム。第4回はリリーフとして活路を見出す高橋尚成を取り扱う。

 

 

  • 日本時代から培ったセキュリティ・ブランケット

1999年にプロとしてのキャリアをスタートさせた後、高橋尚成は常にそのスタイルを崩すこと無く13年のキャリアを全うしており、そして38歳となる来シーズンも同じ道を辿るつもりである。伝統的にコマンドを重んじる日本の野球らしく、高橋はコマンド、そして緩急に愛された選手だ。豊富なキャリア経験を滲ませる安定したメカニクスから、多彩なボールを自在なコースに集めることが出来る。2010年、ニューヨーク・メッツとマイナー契約を結んだ高橋の立場は一介のルーキーにすぎなかった。しかし、同時に彼がとてもタフな経験をも兼ね備えたマイスターであることを証明することに、それ程の時間を要さなかったのも事実である。

当時メッツで正捕手を担っていたロッド・バラハス(パイレーツ)は、その時から既にメジャーでも屈指と言える程の経験を積んだ選手であった。殿堂入りを果たした素晴らしい選手から、平凡なリリーフ投手まで。彼が過去ボールを受けた投手の幅は実に広く、現在彼を求めるチームがあるとすれば、欲しているのはその部分であろう。
しかしバラハスにとって高橋は彼のいかなる経験にも当てはまらない、異色の存在であった。なぜなら高橋は多彩なボールを、磨かれたコマンドで投げ込むことが出来る、バラハスの経験で唯一の存在であったからだ。

「高橋に最も近い存在はミゲル・バティスタかな」と語るバラハスは、「高橋のボールを受ける時は本当に面白い。彼をリードすることはクリエイティブだ。だってプレートの両コーナーにボールを違った動かし方で入れられるんだよ。好きなコースに好きなボールを投げられる、テレビゲームをやっているようだ」と、高橋が日本で培った持ち味を絶賛している。
またこの時、バラハスは高橋の評価についても言及している。「彼はローテーション3番手だ。ローテーション下位では無い、3番手だ。ローテーション半ば以下はあり得ないよ」。アウトを獲得するために多彩なボールを扱うことを良しとする日本の野球文化は、バラハスに大きな影響を与えたようだ。

結果論で言えば高橋は2010年に12度先発としての機会を得たが、その時の内容は4勝4敗で防御率が5.01と平凡な内容であった。フィラデルフィア・フィリーズやニューヨーク・ヤンキースを相手に素晴らしい内容を披露したこともあったが、防御率にして2.04を記録したリリーフに適性が高いことは明白であった。

「リリーフならばボールを3つに絞らなければならない」。メッツでルーキーイヤーを過ごしていた高橋の言葉だ。直後、笑みを浮かべながら語ったのは「でも、どの3つにしようかな」。コマンドと確かなボールさえあれば成功出来ることを確信した、そんな言葉のように聞こえるのは私だけでは無いだろう。そして以降の3年で、その意味が偽りで無いことを証明したのもまた、そう語った彼自身であった。

The Truth -日本人メジャーリーガーを辿る-:田澤純一

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日本人メジャーリーガーの実像を追うシリーズ型のこのコラム。第3回はボストン・レッドソックスで4年目のシーズンを迎える田澤純一を辿る。

 

 

◯スティーブン・ストラスバーグ

2008年12月4日にボストン・レッドソックスが契約を交わしたのは、島国のアマチュア野球でプレーする22歳の若い右腕であった。3年330万ドルという値以上に彼に対して高い評価であることを忘れてはならない。日本にはプロ野球を経ないキャリアを辿ることを異端と捉える向きが伝統的だ。レッドソックスが日本のアマチュア選手を獲得することは、彼らがメジャーリーグとプロ野球間で暗黙の了解として知られる紳士協定、すなわち互いの選手市場に対しては干渉しない取り決めに違反するものであり、今後の信頼関係を損なうリスクを孕んだ決断であった。レッドソックスは田澤に対しメジャー契約を提示した。彼の実力と、彼を取り巻く環境。その全てを考慮し最大限の誠意を示した結果であると言えるだろう。

それから4年が過ぎた。レッドソックスが多大なリスクを承知し獲得した宝物は、メジャー経験56.1イニングに止まっている。2010年にトミー・ジョン手術を受けた田澤に対し、チームは酷く臆病になっている。調整を兼ねたA+と2Aでの登板後、彼は3Aとメジャーいずれのクラスでもリリーフとして起用されている。紛れも無くエース候補として迎え入れたはずの存在は、もはや色褪せてしまった。

しかし私は言おう。彼はスティーブン・ストラスバーグ(ナショナルズ)と同じステージとして括られるべき存在だ。私は正気であるし、至って健康である。だからもう一度言おう。私は田澤を評価している。ストラスバーグと比較出来る程であると信じている。97マイルを放ち、素晴らしいカーブとスプリッターを卓越したコマンドで操る。簡潔に言えば、田澤は2008年、22歳の時点で既にトータルパッケージであった。プロスペクトとして、粗削りな側面が見当たらない。バネ仕掛けの人形のようなぎこちないフォームが目立つ程度である。

トータルパッケージの素材がこれ程までに見過ごされることは珍しいが、田澤に関しては当然であろう。所詮は56.1イニングの経験だ。存在が認知されているはずも無い。

The Truth -日本人メジャーリーガーを辿る-:イチロー

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日本人メジャーリーガーの実像を追うシリーズ型のこのコラム。第2回ではニューヨーク・ヤンキースへの移籍が決定したスーパースター、イチローに迫る。

 

 

○既定路線に満たされた驚き

契約最終年。38という年齢。そして停滞し続けて久しいチーム事情。イチローがもはやシアトル・マリナーズにとってトレード対象であったことは、既にシーズン開幕前からこれら複合的な要素により示されていた。言うまでも無く、彼はプロフェッショナルとしてチーム内外を問わずに多くのリスペクトを受ける存在であり、チーム史上にもしっかりとその名を刻んでいる、紛れも無いシアトルのヒーローだ。それでもなおマリナーズは、チームの再建を達成するためにもイチローのトレードがベストなシナリオであると考えていた。彼らはまだ26歳でしかない至宝、フェリックス・ヘルナンデスの放出さえも噂される程に、危機的なチーム状況に追いやられていたのだ。

だからこそ、一時イチローとの契約延長に肯定的な姿勢と報じられた際、マリナーズのGMであるジャック・ズレンシックは批判の対象として晒されることとなった。確かに彼のトレードセンスの無さは既にマイケル・ピネイダ(ヤンキース)やクリフ・リー(フィリーズ)の件で明らかだが、チームにおける優先順位さえも理解出来ない程盲目なのか、と。

だが、結果的にイチローはニューヨーク・ヤンキースにトレードされることとなった。その交換相手は全盛時彼が保持していた価値を考えればあまりにも惨めな内容であると言わざるを得ない。メジャーリーグ史で永遠に語り継がれるだろう安打製造機を獲得するのにヤンキースが手放したのは、傘下では平凡なレベルに過ぎない若手右腕2人のみであった。D.J.ミッチェルは90マイル前後の良く沈むストレートが持ち味で、今後先発候補として食い込むかもしれない。ダニー・ファークアーも、豊富なリリーフとしての経験を発揮し、広大なセーフコ・フィールドの助けも借りつつ、ブレイク出来るかもしれない。それでも、彼らがトッププロスペクトと呼ばれる人材では無いことは事実であり、今年の始めにヤンキースに送った同じく若き右腕、ホセ・カンポスの方が恵まれた素質の持ち主であった。それも、圧倒的に。

しかし、この惨めなまでの条件をもってしても、イチローのトレード劇を受け入れられないファンは多い。イチローがマリナーズでメジャーリーガーとしてのキャリアを締め括るシナリオもまた、ファンにとっては既定路線的に考えられていたことであった。多くのファンは、マリナーズからイチローが去ったことで、何かぽっかりと穴が空いてしまったかのようだと、そうした趣旨の感想を漏らす。それもまた当然だ。2000年代において、イチローはマリナーズそのものであったのだから。彼らは再建への機動力を得た代償に、チームとしての大きなアイデンティティを手放したのだ。

The Truth -日本人メジャーリーガーを辿る-:黒田博樹

日本人メジャーリーガーの実像を追うシリーズ型のこのコラム。第1回ではニューヨーク・ヤンキースでローテーションの一角を担う黒田博樹にスポットライトを当てる。

 

 

〇職人気質の右腕が披露する堅実さ

選手としての黒田博樹を語る上で外せないワードがある。「堅実」、この一言が黒田の投球を実に見事に表現してくれる。黒田はフォーシームとツーシームを使い分け、スライダー、カーブ、スプリッターを織り交ぜる。驚くべきは速球系の球種を常に92マイル程度に維持しながら、彼は優れたコマンドで全ての球種を自在に投げ込める点にある。特に後者は簡単には会得出来ない、素晴らしい能力だ。

結果的に、黒田は自らの登板試合をほぼ確実に崩さない安定感を披露し始めた。当然の結果だろう。水準以上のコマンドに多彩な攻め手。2010年は速球の平均球速で松坂大輔(レッドソックス)を上回った。常識的に考えて、黒田には隙が見当たらない。

それでも度々炎上するのは、日によって、特にスライダーの失投が増える傾向があるからだ。メジャーの強打者はそれを絶対に見逃さない。彼らは生粋のハンターである。甘いコースに抜けたスライダーは、確実に仕留めることが出来る。それはプーホールズ然り、ブラウン然り。そしてトゥロウィツキ然りだ。幾度とない対戦で黒田が屈辱を味わった回数は数知れない。

しかしながら、世の中には完全無欠など存在しない。無論黒田も例外では無く、勿論それはドジャース、そして今年新たに彼を招き入れたヤンキースも承知していることだ。彼らは誰一人として黒田の実力を疑ってはいない。現実にヤンキースは黒田がドジャース在籍時から2度に渡り獲得を試みた過去を持ち、これはいかに彼らが彼を熱望していたかを物語るエピソードとして知られる。ドジャースも2010年のオフシーズンに、FAとなっていた黒田を当時チーム最高年俸となる1200万ドルで引き留めた。当時既にベテランであった黒田を、しかもクレイトン・カーショー(ドジャース)の台頭も著しいチーム状況下にありながら、だ。

黒田は紛れも無く、メジャーでも屈指の先発投手である。いわゆる一般的なブレイクイヤーを迎えたことは無かったためか過小評価される傾向があるが、彼は優秀な先発投手の1人であるのだ。