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Weekly Report : Week-5

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前年より盤石なタンパベイ・レイズ投手陣
Written by Tsubasa Komiyama
レイズは、現地時間5月3日現在、21勝11敗でアメリカン・リーグ東地区の首位に着けている。チーム打点は、ヤンキース、レッドソックスに次ぐ地区3位であるが、チーム失点は、122失点で2位のブルージェイズを突き放す100失点で1位である。
本拠地のPFや対戦相手にもよるものの、基盤の安定した投手力が地区首位を堅守していると捉えて問題ないだろう。
ところで、興味深いスタッツがある。チームの先発イニング数の合計だ。2018年レイズの先発イニング数合計は624回(1試合平均3.2回)でメジャー全体30位である。29位は805.1回(1試合平均4.2回)のエンゼルス、1位は993.2回(1試合平均6.1回)のインディアンスだ。2019年レイズの先発イニング数合計は145.1回(1試合平均4.1回)でメジャー全体29位である。30位は141.2回(1試合平均4.1回)のエンゼルスだ。順位としては30位から29位であるが、約アウト2つ分増えたと考えると大きな変化である。
年度 | 先発イニング数 | 試合平均 |
2018年 | 624回 | 3.2回 |
2019年 | 145.1回 | 4.1回 |
理由は、昨年クリス・アーチャー(RHP)の見返りの1人として獲得したタイラー・グラスノー(RHP)と、昨年オフにFA補強したチャーリー・モートン(RHP)がオープナーを用いない先発として起用されているからであろう。
昨年、レイズで20先発以上したのはブレイク・スネル(LHP)とライン・スタネック(RHP)の2人だが、スタネックはオープナー起用であるため、実質フルシーズン稼働した先発はスネルのみであった。
しかし、2019年はスネル、グラスノー、モートンの3人が20先発を超える見込みである。つまり、ブルペンの負担が軽減されることにより、オープナーの柔軟性や7回以降の粘り強さが得られるのではないだろうかと推測した。
さて、昨年、レイズがシーズン後半戦において目覚ましい戦績を挙げ、WC争いが白熱したことは記憶に新しい。
下の表は2018年タンパベイ・レイズの月間投手成績と、2018年メジャー平均の月間投手成績である。
メジャー平均は、シーズン終盤にK/9とBB/9が共に上昇している。K/BBは下がっているため、K/9の上昇よりBB/9の上昇の方が多いことが伺える。一方、レイズはもう少し早い段階、6月から7月にかけてK/9を上昇させ始め、7月から8月にかけてBB/9を下降させることにより、K/BBを上昇させている。
要因はオープナーの採用であると考えられる。オープナーの利点は大まかに2点である。
- 初回防御率の悪い先発投手の代わりに、リリーバーが先発することで初回防御率を改善出来る。
- 後続の本来の先発投手とオープナーであるリリーバーの利き手やピッチングスタイルを変えることで、後続の先発投手のポテンシャルを最大限発揮出来るようアシスト出来る。
今回は、具体的にオープナーに向いているピッチングスタイルには触れないが、昨年、レイズがオープナーを(現状において)最大限活かす術を見つけたと言える。それは夏場のメジャー平均とレイズの月間投手成績の差から考えられるだろう。
2018 Team Preview:トロント・ブルージェイズ

*40人ロースターはリンクより参照
*SP横*マークはローテーション候補の意を示す
- 本拠地:ロジャース・センター
レフト | 100.0m |
センター | 121.9m |
ライト | 100.0m |
フェンス高さ | 3.0m |
安打 | 97.4 |
ツーベース | 107.5 |
スリーベース | 93.7 |
HR | 92.3 |
得点 | 94.6 |
- 予想オーダー
1.デボン・トラビス:2B
デビューイヤーから2年連続打率.300を記録するも、17年はキャリアワーストの185打数、打率.259。2B通算DRS=6、UZR=5.4と守備は良いが、GMはそもそも守備指標に懐疑的。18年も離脱が長ければ、新加入のヤンガービス・ソラーテに2Bの座を奪われるかもしれない。
2.ジョシュ・ドナルドソン:3B
4年連続となるAS選出は逃したものの、3年連続30本塁打、OPS+=140を記録した。通算BB/K=0.63とアプローチに定評があり、3B通算DRS=52、UZR=43.2と守備も良い。ただし17年はUZR=-0.9を記録。年俸23MでFA間近のドナルドソンの去就は気になるところだ。
3.ジャスティン・スモーク:1B
17年は打率.270/OPS.883/38(対左7本)本塁打のキャリアハイでAS初出場を果たした。左投手を苦手としていたが、17年は左投手からも打つことが出来た。プルヒッターでありフライボールヒッター。積極的アプローチだが、通算打率.232/.出塁率.317と四球は平均以上に選べている。スティーブ・ピアースと1Bの座を争う。
4.カーティス・グランダーソン:LF
予想オーダー唯一の左打者。37歳とピークは過ぎているものの、17年はメッツで19本、ドジャースで7本の本塁打を放ち、4年連続20本塁打を継続させると共に、通算300本塁打を達成した。極端に慎重なアプローチでハードコンタクトの多いバッター。左打者が不足していることもあって、一定の出場機会が得られるため5年連続20本塁打に期待したい。
5.ケンドリス・モラレス:DH
スモークと同じくスイッチヒッターで、左投手を苦手としていない。17年はOPS+=94だった一方で28本塁打を記録。しかし、エドウィン・エンカーナシオンの穴を埋めたとは言えず、再び30本塁打の大台に乗せたい。BB%が低下する一方でK%が増加しているのは気がかり。
6.トロイ・トゥロウィツキ:SS
故障が多いSSで、18年は既に4月末まで離脱することが決まっている。17年はSS守備でDRS=0、UZR/150=-2.4と、移籍後振るわない打撃成績だけでなく、守備成績でも陰りが見えた。故障さえしなければ好成績を収められる選手だっただけに、復帰後は好成績を収めたい。契約は最短でも35歳となる20年(20→20→14→15*)まで続くことになっている。
7.ランダル・グリチック:RF
17年のオフにカージナルスからトレードで加入した。パワーはメジャー平均を上回るものの、アプローチに難があり、通算BB/K=0.20。プルヒッターであり打球の約半数が左方向(右打者)。パワーポテンシャルを活かしきれていないだけに、新天地でグレードアップを狙いたい。OFでは3ポジション共にDRSとUZRは+を記録している。
8.ラッセル・マーティン:C
通算BB/K=0.66のアプローチと強肩、フレーミングに定評のあるキャッチャー。近年は盗塁阻止率やフレーミングが低下して評価を落としている。13年には、当時まだメジャーリーグで脚光を浴びていなかったフレーミング技術をパイレーツに高く評価された。
9.ケビン・ピラー:CF
球界を代表するディフェンダーの1人であり、15年にはウィルソン Def PlayerのCFに選出。通算DRS=52、UZR=41.8を記録。一方で通算BB/K=0.28、OPS+=85とバッティングは下位打線向きの成績。通算55盗塁19盗塁死とスピードは攻守で活かされている。18年はヤンキース戦にて二盗、三盗、本盗を連続で決めてみせた。
Weekly Report:Week-6

3つのハイライトで1週間のメジャーリーグを辿る。Week-6のキーワードは「ヤンキースの背番号2」 「奪三振王」 「ケビン・ピラー」だ。
・ヤンキースの背番号2
5月14日、ニューヨーク・ヤンキースの背番号2が永久欠番となり、そのセレモニーが試合前にヤンキースタジアムで行われた。チケットは完売、チケット価格も高騰したようだ。ヤンキースの背番号2といえば勿論、デレク・ジーターだ。今更彼について多くを説明する必要もないだろうが、名門ヤンキースのキャプテンであり、野球の成績のみならず抜群のスター性やリーダーシップから多くの野球ファンからリスペクトされたニューヨークの貴公子も2014年に引退してから2年以上が経った。今回の式典には「コア4」としてジーターと共にヤンキースを背負ったアンディ・ペティット、ホルヘ・ポサダ、マリアノ・リベラや、ジョー・トーリ元監督、その他多くの盟友達が出席。親交のあったバスケットボール界の神様とも呼ばれるマイケル・ジョーダンからも手紙を送られるなど、改めてその偉大さを実感させられた。
今回2番が永久欠番になったことによって、ヤンキースの1桁台の背番号は全てが永久欠番となってしまった。ベーブ・ルースの3、ルー・ゲーリッグの4、ジョー・ディマジオの5など、球史に残るスーパースターが在籍し、長い歴史と伝統を誇るヤンキースならではのことではあるが、これからヤンキースでは1桁台の背番号が見れないというのは少し悲しい感じもする。ヤンキースでは1桁台意外にも多くの背番号が永久欠番となっていて、実に21もの背番号が永久欠番となっているのである。勿論MLBで最多だ。
「立場を入れ替えたい人や選手なんていない。なぜなら素晴らしいチームの一員になれて最高のファンの前でプレーできたから。」
相変わらずのキャプテンらしいスピーチは健在だった。
2017 Team Preview:トロント・ブルージェイズ

*40人ロースターはリンクを参照
・本拠地:ロジャース・センター
レフト | 100.0m |
センター | 121.9m |
ライト | 100.0m |
フェンス高さ | 3.0m |
安打 | 108.3 |
ツーベース | 130.0 |
スリーベース | 110.0 |
HR | 101.0 |
得点 | 115.6 |
・予想オーダー
1.デボン・トラビス 2B
デビューから2年連続で打率3割をマークする安打製造機。しかし、出場試合数は62、101と怪我での離脱が多い点が不安材料である。今年も手術明けの右膝の回復が遅れていたが、3月24日のレッドソックスとの試合でスプリングトレーニング初出場を果たした。元々は、タイガースにドラフト指名されており、アンソニー・ゴーズとのトレードでブルージェイズにやってきた。
2.ラッセル・マーティン C
ブルージェイズ投手陣を好リードする守りの要。昨季、チーム防御率がリーグ最高だったのは、彼の功績によるところが大きいだろう。フレーミングの技術には定評があるが、盗塁阻止率が急激に落ちたこと(38.5%→12.9%)と打撃成績が下降しつつあることが不安材料である。今季は、ジャロッド・サルタラマッキアが控えにいるので負担が多少なりとも軽減されるはずだ。捕手のほかに二塁や三塁を守ることも。
3.ジョシュ・ドナルドソン 3B
リーグ3位のfWAR7.6を記録したリーグ屈指の三塁手。昨季も夏場まで2年連続のMVPを狙える好成績を残していたが、9月に入ると故障に見舞われ成績を落としたため、MVP投票では4位に終わった。それでも、マニー・マチャド(BAL)やカイル・シーガー(SEA)といった同リーグの三塁手を抑えて2年連続のシルバー・スラッガー賞受賞はさすがの一言に尽きる。
4.ホセ・バティスタ RF
トロントの英雄と言っても過言ではない大砲。昨季は、レンジャーズ戦でルーグネット・オドーアと殴り合いの乱闘を引き起こした。また、オフにFAになるも怪我や打撃不振もあり、買い手がつかず今年に入ってブルージェイズと再契約した。今年のWBCのカナダ戦で特大の3ランを放つなど勝負強さは健在だ。守備力の低下が懸念されており、今季は一塁での出場が増える予定だ。
5.ケンドリス・モラレス DH
ロイヤルズから3年33Mで加入したスイッチヒッター。2015年にはロイヤルズ30年ぶりの世界一を経験しており、ブルージェイズにも久方ぶりの世界一に貢献したい。昨季は、2009年以来7年ぶりに本塁打を30本台に乗せた。本塁打の出やすい球場に移籍した今季はぜひとも本塁打と打点を増やしてエドウィン・エンカーナシオン(CLE)の穴を埋めたいところ。
6.トロイ・トゥロウィツキー SS
長年、メジャーを代表する遊撃手として君臨し続ける男。故障が多いのがネックで昨年もDL入りし、出場数は131にとどまった。昨季もDRS+10と依然として守備の要として十分な成績を残している。しかし、トロント移籍後のOPSは.800に達せず、昨季のOPS+は101にとどまるなど自慢の打撃に陰りが見え始めているのが不安材料と言える。
7.スティーブ・ピアース 1B
2014年にオリオールズでブレイクを果たした苦労人。翌年は怪我もありパッとしなかったが、昨季はレイズとオリオールズに所属して85試合で13HR、OPS.867と好成績を残した。昨年は対左に対してOPS1.028だったこともありジャスティン・スモークやエゼキエル・カレーラとプラトーン起用されることが濃厚だ。守備では一塁と外野の両翼を守れるため自身の調子とチーム状況によっては出場機会が増えるかもしれない。
8.ケビン・ピラー CF
好守が光る中堅手。足の速さを生かした守備範囲と球際の強さがセールスポイントで、幾度となく投手を助けている。昨季、記録したDRS+21はメジャーの中堅手で2番目に高いものだった。ケビン・キーマイアー(TB)とのゴールドグラブ賞争いにも注目だ。打撃の方は、フリースインガーであることが特徴。安定して高出塁率を維持することができるのならば、リードオフマンに据えるのも面白いだろう。
9.エゼキエル・カレーラ LF
俊足が売りの外野手。バントヒットが多いのが特徴。主に外野の両翼を守り、広い守備範囲と補殺の多さが持ち味。今季は、右打者のスティーブ・ピアースやメルビン・アップトンJr.と併用されることが濃厚だが、いずれの選手も対左の成績のほうがいい点が気がかりなところである。
2016 ALWC Review

現地時間10月4日。とうとうプレーオフが始まった。初戦はトロント・ブルージェイズ対ボルティモア・オリオールズの1ゲームワイルドカードだ。両者ともこのレギュラーシーズン最終試合までプレーオフに進出できるかどうかが分からないという状況で戦っていたためモチベーションは十分。逆に言えば、最後まで本気だったので共に最終試合でエースである投手を先発させてしまい、共に負ければ今シーズン終了となる試合で2番手以降の投手を使わなければならないといった状況にあった。同地区のライバル同士の争いにファンのボルテージも最高潮に達する1戦となった。
試合を振り返る前に、この2チームがどんなシーズンを送ったのかを簡潔にまとめてみよう。
- トロント・ブルージェイズ
昨シーズン実に22年ぶりの地区優勝を果たしプレーオフにも進出したブルージェイズは、課題であった投手陣にテコ入れするためオフにはFAでJ.A.ハップをトレードでドリュー・ストーレンなどを獲得。リーグ1位の得点をマークした打撃陣を擁しシーズンへと向かって行った。
トレードで獲得したストーレンを中心にリリーフ投手が試合を台無しにすることが多かったが、先発陣と打撃陣が奮闘し何とか勝ち越して夏場を迎えると、シーズン中のトレードでは昨シーズンのような派手なトレードはしなかったがホアキン・ベノワやジェイソン・グリリなど要所を抑えた選手獲得に成功。夏場以降一時期は首位に立ったもののボストン・レッドソックスの勢いに追いつくことができず最終戦にまでもつれこんだプレーオフ進出をかけた戦いを制しこの日を迎えた。
今シーズンのブルージェイズは先発投手が予想以上の働きを見せた。最優秀防御率のタイトルを獲得した若きエース、アーロン・サンチェスを筆頭にJ.A.ハップ、マルコ・エストラーダ、マーカス・ストローマンらが奮闘しリーグ1位の防御率をマークすることができた。イニング制限のため何試合か先発をスキップしたサンチェスだったが、最速98マイルのツーシームとキレのあるカーブで相手を圧倒する姿はまさしくエースと呼ぶにふさわしく、自慢のゴロを打たせて取るピッチングも健在だった。
シーズン途中で加入した投手も素晴らしい活躍を見せた。ホワキン・ベノワは7月後半からの加入となったが、移籍後は25試合で防御率0.38とブルペンに不安を抱えるブルージェイズの救世主となった。また、8月1日に加入したフランシスコ・リリアーノも8試合に先発し防御率2.66とピッツバーグ・パイレーツでは防御率5点台だった投手とは思えないピッチングを披露した。
打撃陣は昨シーズンよりも成績を落とす選手が多かったがそれでも20本塁打以上が6人を擁し、リーグ5位の得点をマークするなどなかなかの活躍。主砲のホセ・バティスタが不調や故障で離脱し満足に実力を発揮できない中でエドウィン・エンカーナシオンとジョシュ・ドナルドソンの2人が共に35本塁打以上、OPS.880以上と奮闘した。シーズン当初から弱点となっていた2Bも昨シーズンの故障から復帰となったデボン・トラビスが故障前と変わらない打撃を披露し弱点どころか強みとなった。昨シーズンと比べると若干スケールダウンとなったがそれでもどこからでも本塁打が出る恐るべき打線であることには間違いない。
ボルティモア・オリオールズ
オリオールズはブルージェイズを上回る本塁打数をマーク。チームの本塁打数はリーグ1位の253本塁打だった。47本塁打を放ち、本塁打王に輝いたマーク・トランボを始めとする打撃陣は圧巻。ブルージェイズと同じく20本塁打以上をマークした選手が6人した。しかし、本塁打数はリーグ1位だったが得点はそれほど伸びず、得点は同7位。
あまりにも本塁打に頼り過ぎた攻撃とリーグ10位の出塁率が響いた結果となった。早打ちな選手が非常に多くそれでハイアベレージを残せていれば問題ないのだが300打席以上をクリアした選手で打率.280をクリアしたのはキム・ヒョンスとマニー・マチャドだけ。出塁率.350以上になるとキム・ヒョンス1人だけだった。本塁打を多く打てるという特徴をイマイチ生かしきれなかった打撃陣と言うことができる。
投手陣は先発投手が防御率リーグワースト3位と崩壊気味な中でリリーフが健闘。リリーフはリーグ1位の防御率をたたき出し、脆弱な先発ローテーションを支えた。クローザーのザック・ブリットンは47SVをマークし失敗は0、防御率0.54と圧倒的な数字をマークし、今シーズンのアメリカン・リーグのサイヤング賞候補にも挙げられている。ブリットンの陰に隠れて名前が出てこないことが多いがブラッド・ブロックも71試合に登板し回跨ぎなどもこなしつつ防御率2.05とブリットンがいなければクローザーを任されていてもおかしくない成績を残した。その他マイケル・ギブンズやダレン・オデイ、ドニー・ハートらも好成績を収め先行逃げ切りという勝利の方程式を形作っていた。